森薫「エマ」を読了。久々の王道ラブロマンスにじーんと来た
2016/01/13
いまさらですが....森薫の「エマ」を読了しました。
本ストーリーが7巻と外伝3巻の全10巻と半日もかからず。
映画2本ぶんぐらいの時間で存分に楽しむことができました。
※一部、ネタバレ的な部分があるので未読の方は、そのつもりでお読みください。
ほぼ予備知識無しで読み始めたのですが、「えっ、こういう話になるの?」という王道ラブロマンスでちょっと驚きました。いや、メイド萌えの軽い作品かと思っていて....(すみません)
階級の異なる男女が障害を乗り越え愛を成就する話、と書くと割とありがちなストーリーを想像しますが、確かにありがちな話の展開です(といっても自分の場合、どんなお約束な展開でも結構はらはらしながら読むタイプなのですが....)。
ただ、「メイド」という仕事のディテールや当時の英国社交界の様子など、細部の書き込みが凝っているため全体としては新鮮な印象でした。あと、主人公エマの感情の動きの表現がすごい。一度、離れ離れになってから偶然に再会を果たした後、恋人と手紙をやり取りする部分があるのですが、貴族という身分の相手のことを考えれば自分は身を引くべき....と思いながら手紙を書き綴るシーンは本当にぐっと来ました(涙)
ストーリー展開的には、誘拐されたエマがあっさり見つかったり、出生についての掘り下げがもの足らなかったりと、ちょっと不思議な印象も持ちました。たぶん描く人が描けば2〜3倍の分量を費やすんじゃないかとも思われますが、だらだら話を引っ張られるよりもいいのかもしれない。
外伝の3巻に収録されている話は玉石混交というか、「これ完全に自分が描きたいもの優先で描いてるだろ!」という話も混ざっていて、「本ストーリー中のあの人どうなったんだろう?」という読者が最も読みたいと思われるサイドストーリーがこぼれていたりして、これもちょっと不思議です。まあ、この点は外伝の巻末で作者自身ツッコミを入れてますが(笑)
とりあえず「メイド」「王道ラブロマンス」「18世紀後期英国」あたりのキーワードに引っかかる人は読んで損のない作品だと思います。おすすめ。