Hero of the Day

日々の雑感を徒然に

アマゾンの電子書籍読み放題サービスは早ければ8月に開始

   

amazon-kindle-unlimited-service-is-started-in-august-at-the-earliest

米国では月額9.99ドルで約100万タイトルが読み放題に

ITproにアマゾンの電子書籍読み放題サービスについての記事が掲載されていた。

記者の眼 - アマゾンの電子書籍読み放題、日本上陸は福音か凶報か:ITpro

アマゾンの読み放題サービスについては、米英仏独などで既に「Kindle Unlimited」が月額9.99ドル(米国)で提供されている。

最近になって、アマゾンの日本法人がサービスを開始するという観測記事が出ており、早ければ8月(!)にもサービスが開始されるということだ。

記事ではサブスクリプションモデルで先行する音楽・映像業界の状況も踏まえ、サービス開始後の影響について考察する内容となっている。

サブスクリプションモデルのメリット・デメリット

サブスクリプションモデルのメリット、デメリットについては、様々なところで語られているが、要は「コンテンツに大量に触れることができるようになる」という点をどう捉えるかではないかと思う。

大量消費財になることで、コンテンツに対する「尊重」がなくなり、それが文化の衰退につながる、という考え方がある。

逆に時代を問わず均等にコンテンツに向き合うことができるため、すべてのコンテンツに平等にチャンスがあたえられるという考え方もある。

記事では80年代アイドルにハマる20代前半の若者たちの例を挙げていた。

上司に連れて行かれた「歌謡曲バー」で歌謡曲を面白いと感じ、LINE MUSICやAWAなどで公開されている80年代アイドルのプレイリストで楽曲を楽しんでいるという。

彼らにとっては、今月リリースされた楽曲も、80年代のアイドルたちの楽曲も等しく「新曲」だということだ。

コンテンツに触れたくなるかどうかが、「鮮度」で大きく左右されていた時代とは、コンテンツの楽しみ方が大きく変わるのが、サブスクリプションモデルだろう。

サブスクリプションは既存の販売方法に比べてどのくらいの収益が得られるのか

とはいえ、結局はどれくらいアーティスト・作家に売り上げが還元されるかが、サブスクリプション方式が支持されるかどうかの分かれ目だと思う。

先行する音楽業界では、販売形式によって、次のような収入の差が生まれるという。

  • ある楽曲をCDで販売して得られる金額は「8.48円」
  • ダウンロード販売だと倍近い「16.6円」
  • サブスクリプション販売だと再生1回につき「0.16円」

サブスクリプションでCDやダウンロードと同額を稼ごうとすると、50〜100回の再生が必要になる。

この数字をどう捉えるかだが、「買わせる」敷居に比べると、ただ「聴いてもらう」というのは、ずっと簡単なのではないかと思う。

定額だからと気軽に聴く人数と、購入してしまう人の比率でいうと、この「1:50〜100」ぐらいの差ではないだろうか。

「売れれば100、売れなければゼロ」の極端さを緩和するのがサブスクリプションのメリット

そもそも買わなければ「ゼロ」である。それに比べて、いくらかでも聴いてくれる人があれば、収益があがるのだから、どちらかといえばサブスクリプションモデルの方が有利なのではないか。

以前、「ブラックジャックによろしく」「海猿」の原作者である佐藤秀峰が記事で書いていたが、連載が終了すると、単行本の売り上げはほぼゼロになってしまうらしい。

これは自身の「ブラックジャックによろしく」でも確認できた現象だという。

あれだけ話題になった作品でもそうなのだから、他の小ヒット以下の作品だとどうなるか想像に難くない。

これがサブスクリプションモデルであれば、とりあえずタダ(定額)なんだから読んでみようという人も出てくるだろう。

また、このご時世なので、そうやって読んだ人がブログやSNSで作品に言及して、他の人に広がるということも可能性としてはある。

この佐藤秀峰という人は実験的な販売方法をいろいろ試していて、自作を全巻無料で配信したり、広告素材として提供したり、と様々な手法に取り組んでいる。

これも「作品を埋もれさせない」ための施策のように思う。

良い悪いの議論の前にサービスは始まりそうだが...

と、いろいろ記事をネタに書いてきたが、出版不況と言われる現在、国内の出版社に「No」と言える選択肢は残っていないように思う。

アマゾンも海外各国でのデータをもとに説得にあたるだろうから、決して博打的な取り組みとは言えないだろう。

また、先行してスタートしている「dマガジン」などの雑誌読み放題サービスが参加誌を増やしている現状を見ると、「サブスクリプションは悪くない」という出版社の認識がすでに出来上がっているようにも思う。

個人的にはKindleの購入で毎月結構な金額を使っているので、月額1000円程度で読み放題サービスが利用できるようになるのはありがたい。

もちろんすべての本がサブスクリプションに対応するわけではないだろうけれど、購入せず定額で読むことができるようになる割合は少なくないのではないかと予想する。

8月といえばもう来月の話だが、楽しみに待ちたいと思う。

 

 - Kindle