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映画「ロボコップ 2014版」リメイクのお手本と言える、なかなかの佳作

      2015/12/12

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「ロボコップはポール・バーホーベンの一作目が最高!」と思っていたのでスルーするつもりだったのですが、はずみで観てしまいました。できるだけネタバレしないようにレビューしたいと思います。

オリジナル版では犯罪都市デトロイトに新開発のロボット刑事投入!という話でしたが、リメイク版では中東など紛争地に投入されているロボット刑事(というかロボット兵士といった方がいいと思いますが)を米国内に配備するべきかどうかというところからストーリーが始まります。

論点としては武装したロボットに一般市民を守らせることが妥当かどうかというあたりで、米国内では感情のないロボットに人間を守ることができるのか?というのが一般世論の大多数を占めているという設定になっています。

それに対して「半分ロボット、半分人間」のロボコップを投入しようというオムニ社の思惑からストーリーが展開します。

冒頭で中東に投入されたロボット兵士をニュースキャスターが取材するシーンがあるのですが、自爆テロを図るテロリストをロボット兵士が淡々と制圧するシーンが続き、先日「アメリカン・スナイパー」を見たばかりなのもあって、若干気が滅入ります。。

話は逸れますが、自爆テロって、どうしても太平洋戦争時の「神風」「特攻隊」とイメージがかぶってしまいます。決して自爆テロを肯定するつもりはありませんが、自爆せざるをえない状況に追い込まれる実行者の心中を思うと、どうにもやるせない気持ちになります。

それはさておき。。

2014年版がオリジナルと大きく異なる点としては、

  1. ロボコップに改造されてしまったマーフィーにロボ化された自覚がある。オリジナル版ではほぼ記憶をなくしているマーフィーが少しずつ記憶を取り戻していくところが見どころになっていますが、まったく逆の設定。
  2. マーフィーの家族がストーリーの中で重要な位置を占める。オリジナルではロボ化される前のマーフィーと家族の描写が若干あるだけで印象が薄いですが、今作ではマーフィー妻と息子がストーリーの中心になっている。

といったあたりでしょうか。

(1)についてですが、オリジナルではロボコップにされた段階で過去の記憶がほぼなくなっている状態なのに対して、2014年版では記憶が鮮明なままロボコップにされてしまいます。

ロボ化されたマーフィーに少しずつ過去の記憶が蘇ってくるところが、オリジナル版の見どころだったわけですが、リメイク版では、生物としてのパーツは、ほぼ頭と心臓だけになってしまった状態をマーフィーが自覚する設定になっています。

さらに(2)ですが、頭と心臓だけ残されたマーフィーをロボコップにするかどうか、マーフィーの妻であるクララが判断を求められるシーンにはじまり、オリジナル版では影の薄かったマーフィー妻と息子がかなりフィーチャーされる設定になっています。

マーフィー妻のクララを演じるのは、アビー・コーニッシュなのですが、これが妙にお色気ムンムンでちょっと違和感を感じます。

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設定からすると、ちょっとはかない感じの女性の方が適任のような気がしますが、完全に肉食な感じ。。個人的には好みの女優さんではあるんですが。。

オリジナルでは、相棒の警官役でナンシー・アレン(かわいい!)がヒロインでしたが、今回は妻役のアビー・コーニッシュがヒロイン役ということになります。

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上で書いたように、マーフィーは頭と心臓だけ残された状態でロボコップになることを迫られます。マーフィー自身はそんな自分の姿を家族にさらしたくないと、ロボ化して生き延びることを拒否するのですが、死んでしまうぐらいならロボットとしてでも生きていて欲しいというクララの希望により、ロボコップとして再生されてしまいます。

このあたりのストーリーの流れは夫婦の愛情の機微がよく出ていて、かなりグッときます。

オリジナルでは記憶を無くしたマーフィーが少しずつ家族や過去の自分について記憶を取り戻していくくだりに同情や感動を覚えるストーリーでしたが、今回はロボコップになったマーフィーが家族との関係を取り戻そうとするところが作品のメインテーマになっています。

オリジナルでもそうでしたが、個人的に一番感情移入できたのは息子(たぶん小学生ぐらい?)とマーフィーとの描写です。これは男の子を持つ父親であれば、間違いなく感情を動かされると思います。ロボコップになったマーフィーが息子と初めて会うシーンは涙無くしては見れないのではないでしょうか。

そんな感じでオリジナルと設定は異なるものの、序盤から強いストーリー展開を見せる今作ですが、残念ながら後半になると、若干ストーリーが間延びした印象になってしまいます。

理由をいろいろ考えたのですが、オリジナル版では「完全に悪役」だったオムニ社の社長や科学者たちが、リメイク版では「ほどほどに悪い奴」という立ち位置になってしまっているせいかなー、と。

オリジナル版ではオムニ社を徹底的にやっつける展開だったので、鑑賞後の印象は勧善懲悪的なスカッとしたものでしたが、リメイク版ではオムニ社の面々がそんなに悪い奴じゃないこともあって、カタルシスが得難い展開になってしまっています。

多少デフォルメが過ぎても、善人、悪人がはっきりしている方が見ていてスッキリするなあ、と思いました。そのあたりは、やはりバーホーベンはうまかったですね。

ただ、トータルで考えると見て損はない映画だと思います。オリジナル版を未見であれば、そちらを先に見て欲しいとは思いますが。

あとSFXなどのプロダクションですが、さすがに2015年クオリティで、1987年のオリジナル版とは隔世の感があります。個人的にはストップモーション大好き人間なので(レイ・ハリーハウゼンは神!)オリジナル版の方が魅力的なのですが、リメイク版も手堅い作りで安心して観ていられます。

息子を持つ父親であれば感情移入できること間違いなし。ぜひ観てもらいたい映画です。個人的にはアビー・コーニッシュの過剰な色気が印象的な作品でした。

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